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水上悟志短編集「放浪世界」発売記念特集

水上悟志短編集「放浪世界」発売記念特集

水上悟志先生渾身の短編集「放浪世界」が本日1月10日発売です!
それを記念して収録作「虚無をゆく」の演出解説や制作エピソードにまつわる話を
水上先生にインタビューしちゃいました…!!

また、あわせてプロの漫画家を目指している方たちへのアドバイスも頂いております。
それではお楽しみください!

1.「虚無をゆく」 演出解説

― こちらで選んだ数点の「コマ割」「構図」などの演出意図に関して、読者と作家志望者、両方に向けてコメントを頂けないでしょうか。

3ページ目
P.3

水上:
全体のテーマ的には、この漫画の世界の違和感を伝える最初の場面なんですが、別段面白いシーンではないのでとりあえず読みやすくしようという努力だけしておいて、なるべく手短にしようと1ページの上段に重要な情報をまとめて下段に主人公の生活を見せるシーンへの繋ぎを描きました。

終盤を描く段階に至って締め方を考える頃に自分で読み返したら「実は伏線だった」と拾えそうな種を先に撒いていたシーンでもあります。

伏線の種を撒く、というのはやるのに覚悟の要ることです。拾えなくても物語の邪魔にならないようにする技術と、拾う時には物語全体のテーマに関係させる理屈力が無ければ拾う意味がないので、後日続きのネームを描く未来の自分を 信じて描きます。種を撒いた当日中には伏線回収のシーンは絶対描けません。一度忘れないと、他のシーンがのびのびと描けないからです。

そんな技の自信と不安の葛藤詰まった微妙なページです。

6~12ページ目
P.12
P.10-P.11
P.8-P.9
P.6-P.7

水上:
このシーンがとにかく描きたかった・描かねばならなかったシーンです。というか、一番最初に思いついたシーン。8・9ページ目の見開きのところですね。このシーンを元にこの読切の舞台設定が出来ました。舞台設定が出来ただけであって、テーマまではまだこの段階では決まってません。そして、どんな最後のコマならばこの読切は完結を見られるのかこのOPに相応しいEDを描かねばならない、という負債を負った瞬間でもあります。

もちろん、それはこの画を思いついたプロット段階であって、実際にネームに描いている段階では全体のテーマは見えてます。ネーム段階では、12ページ目でようやくタイトルが出るので、アバンタイトルとして流し読みでも読めるように気を使いました。

18ページ目
P.18

水上:
ユウの視点からのおねぃちゃんの顔です。アオリで横顔。そんだけ。

真剣な顔なのは、AIが自然な表情を計算して実行するほど余裕が無かったからだと思います。ユウをサロからどう守るかの状況パターンを演算中の顔です。

もしこの世界のロボットに感情があるのだとしたら、この顔こそがもっとも感情のある顔だったと思います。この場面以外の顔はほとんど「プログラムのパターン・もしくは見せるためにちゃんと作った表情」です。

20ページ目
P.20

水上:
中段のコマを大ゴマにするためと、着地の直前に間が欲しかったので上段のコマを作りました。

上段の構成は、「何かが降りてくる流れ」の左のコマをちょっとでも縦長にしようと上段右はさらに上下二段に分けたものの、大して縦長にはなりませんでした。

中段は、さして巨大でもないサロを迫力良く見せるため、と主人公の置かれた地理的状況を説明するため、という二つの要素を盛り込んだ構図です。

24ページ目
P.24

水上:
浮遊感を見せるための俯瞰です。かつ、OPの巨大怪魚と巨大ロボの壮大なイメージとは違うスケールでもアクションを重要に見せるために高さ・怖さを演出した構図です。

「俯瞰」は身体性を感じる上に状況の把握もしやすい良い角度です。

2.「虚無をゆく」 を2ページ増やした理由

― 72ページから74ページに増やしたのはどの部分で、そこにはどんな意図があったかお教え頂けますでしょうか? また、そこで気をつけることなどがあれば(特に志望者に向けて)、あわせてお教えください。

水上:
最初72ページの予定だったので(印刷的にキリの良い8の倍数)、一度はその通り納めはしたのですが、72ページ版だと最後のコマが小さくなってしまったので最後のコマを大きくするために、収録予定の単行本の総ページ数と相談して74ページ版のネームも描いてみました。

まず、変更部分は72ページ目以降です。71ページ目までは、72ページ版も74ページ版も同じです。そこまでは見開きの位置もあって直す余地がありませんでした。

72ページ版では、新初代の決意の表情にカメラを向けることもなく、最後のコマはおねいちゃんの「おやすみ私達の全て…」でした。74ページにする際、足したのはそれ以外のコマです。

最後のページは、序盤の少年ユウが持っていた「団地の外には世界がない」という虚無感を成仏させるためのラストです。

プロット段階の最初では「おやすみ」のコマを大ゴマにして締めるつもりだったのですが、74ページ版のネームを描く段階に至って「これはユウの物語だから」と思い直して、盤古と宇宙の画で締めることにしました。

ちなみに最初の約束どおりの72ページ版と、提案として74ページ版を同時に送って、担当氏に判断してもらいました。いくら作家が良いと思っても、漫画とはあくまで出版社がコストやリスクを請け負っている商品であることを忘れてはいけない、と志望者達には言いたい。おれ今酒飲みながら答えてるからいちいち長いぞ。でも読め。

3.連載と読切について

― 作品を着想した際、いちばんやりたかったことを教えてください。

水上:
ちょっと前に「ひとりぼっち惑星」てアプリゲームが流行ったでしょう。でしょうって言われても知らんわっていう人も多いと思うけど。説明面倒だから気になる人は各自検索して。

そういう「広大な宇宙に人間はおれひとり」という壮大さと虚無感を感じさせるSFを描きたかったのです。目指してた味は「ひとりぼっち惑星」なんですが、画的に描きたかったことは、一番最初に思いついた、「団地越しの空で、巨大な魚を巨大な手が殴ってる風景」というシーンで、その他の部分はこれを描くためにでっち上げたようなものです。

発想の順番は、
イメージページ数に合わせたスケールの設定大まかな構成と締め方
という感じ。

あとAI関連。私はAIに魂やら心は無いと思ってます。しかし心があるとしか思えない振る舞いをロボットがすることは可能だと思います。ではどう描けば充分に進化したAIに心の有無をハッキリさせることができるだろうかと悩み、結論は、生身の他人の魂でさえ有無の確認はできない以上、「観測者の主観による」が答ということになりました。

4.連載と読切について

― 連載と読切、その違いやそれぞれの魅力、作家として意識したいことについて教えてください。

水上:
描く側の視点でってことですよね? 連載と読切の違いは、執筆にかかる時間と、責任の違いです。読切は基本描き逃げ。一回描いてはいおしまい。その代わり単品で完成品なので後々にそのフォローも出来ない。あと、必ず載せたら原稿を引き上げる、もしくは、短編集を出す出版社をあらかじめ決めておく。先方ともしっかり話をつけてから描く。あちこちの出版社に頼まれるがまま描いて、あとで短編集をどこで出すか揉めた仲間を何人か見てきたので、そこは最初に着地を目標にしないと駄目だと肝に銘じてます。あと、単行本になってようやく資産なので。ただ雑誌に載っただけでは、原稿料と労力を物々交換しただけのバイトも同然だから仕事で読切描く時は新人皆気をつけるべし。漫画を描く行為は、経済的には資産の生産と心得よ。そういうことを考えておかないといけないのが、読切。

連載は描いてる時間、いや期間が長いのが良い。今これ描いたら面白いぞ、という無責任なアイデアや伏線を描きながら、なんだかんだで時間があるので、そこそこ苦しんだ後に、すばらしい伏線回収のアイデアが閃いたりするのがとても楽しい。このために漫画を描いてるとも言える。それと物語に「積み重ね」が出来るので、連載が続くほど盛り上げるのが簡単になる。

あと、重要なのは終わらせる責任感。始まったものはかならず終わる。物語に相応しい着地は大事。そういうのも含めて、連載はただただ楽しいだけです。

5.総評、その他インタビュー

― その他、「虚無をゆく」執筆にあたって思ったこと、意識したことがございましたらお教えくださいませ。

水上:
質問③で答えた通りのことを意識してました。あと、水面下の大仕事がひと段落した直後にこの74ページも絞り出したので、「もう描きたいことはない。おれの才能はここまでだ」と思ってました。もし事故で担ぎこまれて「しっかり!今は寝ちゃだめ」とメガネ巨乳のナースに言われても「あ、お構いなく、すぐ死にますんで」と躊躇なく意識を手放してただろうなと思うくらい燃え尽きてました。

そんな燃え尽き状態が半年は続いてましたが、今は少しづつ快方に向かってます。時間って偉大。だから時間を使って描く連載は楽しい仕事。

そういうわけで連載の企画は練ってるので、またどこかでお見かけしましたら読んでやってください。

水上悟志

水上先生、ありがとうございました!!!!!

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応募〆切

2018年1月31日(水)

当選発表

  • 当選者の発表はTwitter上のDM(ダイレクトメッセージ)でのご連絡をもって代えさせて頂きます。
  • 当選のご連絡は、2018年2月中旬頃の予定です。
  • 個人情報の取り扱いについてをご確認いただき、同意の上でご応募ください。
  • 当選者の個人情報につきましては賞品発送に使用し、発送後は発送履歴情報として一定期間保管し、保管期間経過後に破棄します。当選者選出後、個人情報を記載することなく当社規定に基づき破棄します。

注意事項

  • 当キャンペーンへのご参加は、Twitterのアカウント(無料)が必要です。
  • 非公開設定など、DMが送付できない場合は無効となります。
  • 当選者の決定は、期間中にご応募頂いた方の中からの抽選となります。
  • ご応募は、日本国内在住の方に限らせて頂きます。
  • 当選のご連絡から一週間以内に発送先をご連絡頂けない場合は、当選の権利が消失しますのでご了承下さい。
  • プログラムによる自動投稿や、複数アカウントの使用、同じ内容での繰り返しの応募などは、抽選の対象外とさせて頂きます。
  • ハッシュタグが正しくついていないツイートは、抽選の対象外とさせて頂きます。

コミックス情報

水上悟志短編集「放浪世界」

水上悟志短編集「放浪世界」

少年の頃、世界の全てだった団地…でもそこは…!!?
出口も入口もない虚無の旅…
その先に待つ衝撃の真実とは…。
水上SFの新たなる金字塔「虚無をゆく」を含む
全5作収録の待望短編集!!

B6判 571円 (税抜)

ISBNコード13:9784800007421

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