漫画賞・持ち込み

2018年4月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第28回募集、期待賞4作品・奨励賞2作品・努力賞4作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…? (4月30日締切分)

完成原稿部門:期待賞 賞金5万円
受賞作掲載

「あんばこ」

「あんばこ」

寺田寛子(33)

あらすじ

幼い頃に母を亡くした令嬢・沙季の元に生前の母を撮影した「うない」という男が現れた。祖父と不仲だった母の事を知りたい彼女に、うないは「あなたの母は嘘つきだ」と言う。信じようとしない沙季にうないが撮った写真には、沙季が隠している古傷が写っていて……?

作品講評

終始不穏な空気が漂い、作品の雰囲気作りが上手い。背景の建築物や家具の細かい装飾までしっかりと描きこんでおり作家の熱を感じた。ストーリーは沙季の暗い過去を母と祖父の確執をうまく取り入れて展開され、パンドラの箱を開けるようなドキドキ感があり、次のページをめくらせようという気概が感じられた。ただ、ストーリーにおける重要人物である、うないとカメラの関係が説明不足で消化不良。うないが「自身はカメラのための台座」という表現があるが、自分が思念を「摂る」と表現している個所もあり、謎のままで終わってしまっている。世界観や設定をしっかり作っているのに惜しい。今後は伝えたいことを第三者に伝わる描き方をしているかを気づけるように心がけて欲しい。

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「Over The Glasses.」

「Over The Glasses.」

きぃやん

あらすじ

妻を亡くした男性が遺品整理の最中に見つけた眼鏡、それは若き日の妻の姿が映し出されるものだった――。

作品講評

当賞では珍しい老人を主人公としたストーリーながら、妻への想いを再確認するストーリーの爽やかさが心地よく、審査員も少なからず胸を打たれた。お話の核となるのは主人公と妻である一方、その関係性が不透明であり、作中でも補完されにくい情報の出し方をしていたので、そこが改善されればさらにドラマを楽しめただろう。一部のセリフ回しが抽象的すぎたのも一因か。まず目指して欲しいのは、相手の記憶に残りやすく、深い理解や共感を得られること。読み手の目線に寄り添う意識を持ちながら、光るセンスをのびのびと活かして欲しい。

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「雨降る森を抜けて」

「雨降る森を抜けて」

尾羊 英

あらすじ

最愛の恋人を事故で失った少女・マリオンは、絶望の果てに失われた呪術に手を染める。森の工房に引きこもり、「生き人形」を作ることで、かつての恋人を蘇らせようとするマリオンだが…。――これは、真実の愛を識る物語。

作品講評

読みやすく、全体的に丁寧に整えられた作りが好印象だった。主人公が人形を作る過程の狂気や「人間」と「人形」の差異をより明確に描写すれば、さらに洗練されるだろう。そつなく描けている一方、この作品だけでは「商業作品で何を描きたいのか」がまだ見えないので、次回はぜひ、もう少しキャッチーな題材で挑戦してみてほしい。

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「未来のハルナ」

「未来のハルナ」

幾田羊

あらすじ

商店街にある古道具店の息子・悠は店番をしていた。その時、彼の目の前に現れたのは、ユウレイ―…いや、未来人!?

作品講評

雰囲気があり、魅力的な作風。しかし、絵が味というよりも単に雑に見えてしまう部分が目立っていた印象。演出力は高く、ドラマとしての形も取れていて、基礎的な構成力はあるのだが、まだ粗さが見られ、ヒキの弱さや説明不足で分かりにくいところがあった。少女が未来人である必要性、また少年キャラなど、もっと掘り下げて明確に描写していれば、より良くなったように思える。根気良く作品に向き合い、全体的に丁寧に処理することを心掛けてほしい。更なる高みを目指せる力は十分に持っていると思うので、今後の成長に期待する。

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完成原稿部門:奨励賞 賞金3万円

「運命は掌の上で微笑む」

「運命は掌の上で微笑む」

遠山夏代

あらすじ

神と人とが共存する世界。奉公人のヤヨイは、幼い時から慕っている主が荒神の生贄に選ばれた事を知り、自ら主の変わりになる事を宣言する。そして、決死の覚悟で荒神の元へ行くのだがそこで…。

作品講評

線画描写やトーン、ベタの使い方が非常に丁寧で、綺麗な画面作りに好感が持てる。またキャラの表情や仕草にこだわりを感じた。しかし、物語の面では拙さが残る。主人公が神と関わっていく物語だが、神様らしさが弱かったのが勿体ない。題材に対して沿ったネタを追及して欲しい。また説明的なセリフが多く、重要なコマが他のコマと同じ大きさで描写されており、目が滑りやすいので注意が必要だ。今後の更なる画力向上、物語の成長に期待する。

「My cup of tea」

「My cup of tea」

ハチワレ三毛

あらすじ

謎多きラブロマンス小説家・ローズの元にやってきたのは、可愛いメイドさんで…。

作品講評

ページをめくる度に驚きあり、ほのぼのあり。優しいヒューマンドラマを描くポテンシャルが認められ、今回の受賞に繋がった。しかしながら、伝えたいテーマと扱うモチーフの組み合わせについては腑に落ちない印象が残る。本作は、とある秘密を持つ主人公が、女の子とすれ違いつつも惹かれ合い、心理的境界線を解消していく物語だが、その中で主人公を人外猫にした理由は何故なのか。理由付けをほのめかすだけで読み手への物語の説得力は格段に上がるはず。

完成原稿部門:努力賞 賞金1万円

「Wichtiger Freund」

「Wichtiger Freund」

佐々木優香(19)

あらすじ

魔法学校の1年生・レイには心を分け与えたぬいぐるみの弟子・エリーがいた。ある日、レイはエリーをドラゴンに変身させようと魔法をかけるのだが、立ち込める煙の中現れたのは人間の少女になったエリーで…!?

作品講評

好感が持てるキャラクター、勢いのある展開をベースに笑える部分やキュンとさせられるシーンがしっかりと用意されている良作。工夫とセンスが伺えるその一方で、構成面には荒削りな印象が残ってしまうのが惜しい。例えば、レイ(主人公)とエリー(ヒロイン)の2人の軸で読み進めていく中で前触れなく現れるライバルとその回想(説明)ページの分量には戸惑いを感じてしまう。今後は題材を活かす為の精査を試みてほしい。伸び代に期待大。

「Luca」

「Luca」

はやむら ころも(22)

あらすじ

臨床心理士のルカは難病の治療中である少女のカウンセリングを担当していた。しかし、ある日少女のカルテを見たルカはその“検査”に危険性を感じ…。

作品講評

見せたいシーンがはっきりしており、作品の目的が明確なのは読みやすく、演出的にも楽しめるようになっている。一方でそのシーン以外の見せ方に演出意識が弱くメリハリが無いため、見せ場まで読者を引っ張る要素に乏しい。絵からは、特に目を描くことへのこだわりを感じ、しっかり描き込まれているが、輪郭や体に関してはまだまだ筆致が不安定なのが見えてしまった。こだわり抜いたその目に、その顔やその体が付いているのはアリなのか。こだわりを徹底してほしい。

「赤ずきんと赤ずきん」

「赤ずきんと赤ずきん」

赤マフラー大和(24)

あらすじ

狼に噛まれた者は狼に変貌する――。気弱な赤ずきんの少女は姉と一緒に猟銃を持ち、狼狩りを生業にしていたが、ある時姉がオオカミに噛まれてしまい…。

作品講評

バディの赤ずきんと、狼が感染していくというアイデアは良かった。ただ主人公の心理描写が薄く、狼になった姉を殺す葛藤や、狼と対峙する赤ずきんという役割に対しての思いを見せるなど、その描写を通して作品世界に対するなんらかの説得力はもう少し欲しかった。ストーリー構成はもう一工夫必要で、読者の心が動くような演出も欲しい。絵柄とキャラクターの記号もうまくマッチしていないので、人物の違いの強調が弱いのも今後の課題である。背景も更に描き込みがしっかりしていると、この題材にそぐう画面になる。

「ほしのにわ」

「ほしのにわ」

畑とうふ(26)

あらすじ

国を守るため、少女は自らを代償に祖国を照らす“星の座”を志す。しかし、その座に選ばれたのは彼女ではなく、彼女の親友だった――。

作品講評

世界観などの作りは悪くないものの、それを見せる構成力が足りていない。特に「星になる」ことがふんわりしており勿体なく感じる。また、デッサン力や絵を安定させる力のレベルアップはおそらく当人意識以上に求められている。キャラクター描写は、キャラクターが「何かしら抱えている」ということがセリフではなく演出で伝わってくるのは良かった。設定・世界観の伝達が不十分でもキャラクターの感情を追うことができ、ドラマを把握することが出来たのは強みである。テーマをしぼるなどして、「何を一番に見せていくか」という意識を強化すれば、よりキャラクターの心情が分かりやすく、作品の面白味も引き立つようになる。

最終選考作品

「崩」(完成原稿部門)

芝原宗平(19)

総評

期待賞4作品・奨励賞以下6作品選出。
前回とまではいかずとも高水準な作品が散見した今回。

期待賞の4作品の中でも特に完成度が高かったのは「あんばこ」。企画、設定、演出、作画が上手くマッチし、作品を一段階上のレベルまで昇華させている。惜しむらくは構成の部分。熟読しないと理解を得られない部分が多少なりとも見受けられた。もう一歩、ネームの練り込みが必要か。「Over The Glasses.」は普遍の愛を描いた作品。それを、通常では敷居の高い題材をもって描き切った事に、ただならぬ情念を感じる。一方、情緒的・抽象的な表現を多用したが故の分かりにくさが出てしまったのが残念だった。

同賞の「雨降る森を抜けて」「未来のハルナ」はもちろんレベルの高さは伺えるのだが、上記2作品と比べると改善の余地は多い。しかし、現状で進むべき道は各々の作品によって浮かび上がったように思える。奨励賞以下の作品についても同じく、何が足りないのか自分の作品と真摯に向かい合って欲しい。

今後も、自分の「描くべきもの」に挑戦した作品の投稿をお待ちしております。

5月末〆切の発表は2018年6月30日!