漫画賞・持ち込み

2018年9月期

月例マグコミマンガ大賞 結果発表!!

第33回募集、佳作1作品・奨励賞2作品・努力賞5作品選出!

今回も多数のご応募ありがとうございました。その中から選出された、栄えある受賞作品は…? (9月30日締切分)

完成原稿部門:佳作 賞金10万円
受賞作掲載

「この愛の行方」

「この愛の行方」

池田ルイ(21)

あらすじ

リコールで廃棄される予定だったアンドロイドの美青年・シオンは幼き少女・ケイコに買われる。以来、傍で彼女のお世話をしている――叶わない恋心を抱きながら。体が老朽化し壊れるまで、彼女を見守り続けることが愛だと思うシオン。だが、ケイコが二人で行ったバーで知り合った、無骨な青年・虎太郎に対して恋をしていることに気づき…。

作品講評

前投稿作に比べ、地に足の着いたストーリーで、キャラにドラマもあり良かった。人物や背景の構図にセンスがあり目を引く。一方で、主線を何本も線を重ねて描くのでガタついた線が目立ち、画面が荒く見えた。トーンのはみ出し含め、今後は商業に載せることを意識したクオリティを目指して頑張ってほしい。

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完成原稿部門:奨励賞 賞金3万円

「メメント・モリ」

「メメント・モリ」

宮野道子(20)

あらすじ

放課後、皆に内緒で旧い校舎のピアノを一緒に弾いていた恭也とみずき。これからも一緒にピアノを弾こうと約束した矢先、校舎の床が抜けてる事故が発生し、右腕を失うみずき。それから数年経ち、恭也がある発明をした報が届く…。

作品講評

前作に比べ、確実に成長が見られる作品。ストーリーに描きたいものの具体性が出てきており、展開で読者を楽しませようというエンターテイメント性も見える。画面作りに関しても演出含めオリジナリティに磨きがかかっており、目を見張るものがあった。今後も独善的にならぬよう、作品の先にいる読者のことを考えながら創作をして欲しい。

「らんちゅうエントロピー」

「らんちゅうエントロピー」

更紗場ていら

あらすじ

主人公は高校3年生で転校したこともあり、学校では周囲と馴染めないでいた。そんな時、通学路で金魚の「らんちゅう」を見つけ…!?

作品講評

話が安定しており全体的な評価が高かった。特に主人公の持つ背景と金魚「らんちゅう」の出会い方や絡ませ方がよく、すっと物語に入っていける力があり爽やかな読後感を得られた。また、作画面でも若干地力不足が感じられたが、絵柄がかわいらしく、それをカバーできている。ただ、話の転として泥棒騒ぎの下りは前振りがあったとはいえ、もうひと工夫しているとさらによくなるだろう。全体的にいい意味で小奇麗にまとまっており、今後も伸びが期待できる。

完成原稿部門:努力賞 賞金1万円

「証拠のメモリ」

「証拠のメモリ」

藤堂くれは(15)

あらすじ

部活の朝練、バスで和正と雑談、二人のキーホルダー…それが幸太郎の夏休み。だが、不意に告げられた和正の引っ越しに幸太郎は…?

作品講評

爽やかさと叙情的な雰囲気が素晴らしく、夏の儚さが過ぎていくかのような話運びは選評会でも評価が高かったが、いかんせん作画面で点が辛くなってしまった。また構成面で過去と現在のシーンの頻繁な行き来が座りが悪い。だが確かなイメージ力はあり、特に日差しのきつい夏らしいコントラスト比や光量さが激しい夜での影の付け方は目をみはるものがある。15歳とのことで、そういった課題も描き続ければこれから自然解消するだろう。逆に、手なりでイメージを出力するクセが着いてしまわないよう、常に注意して励んでほしい。

「指先の温度」

「指先の温度」

はまぢょみ(33)

あらすじ

ウキウキと化粧をするおばあちゃんの姿を不思議に思う孫の寿。おばあちゃんは訪問美容師の真島に少女のような恋を抱いていたのだ。おばあちゃんの髪を丁寧に切る真島の姿に寿も…。

作品講評

優しいペンタッチと和やかな空気感に癒やされた編集が多く、大人の女性をターゲットにした漫画らしさを感じた作品だった。一方、孫の寿の恋模様に寄ったことで世代を超える恋模様としてのまとまりはあったが、題材のキャッチーさが弱く感じられた。自分の作風がどういった立ち位置なのかを客観的に捉え、確実に特定の読者層に刺さる題材選びを心がけて欲しい。また、題材をしっかりと伝えるためにも背景や小道具の描写も洗練していけると良いだろう。

「消極フロッグ」

「消極フロッグ」

酒見(20)

あらすじ

OLの加代は同僚の孝太と付き合っている。優しい彼氏、幸せそうなカップル。なのに加代は、彼のことがどうしようもなく気持ち悪い。

作品講評

自分のことが嫌いで、そんな自分を好きな相手をも嫌悪してしまう――蛙化現象の苦しさを、当事者のみならず多様な価値観とともに描いた、考えさせられるストーリー。ただし、己と向き合って答えを出す展開といえども、新たな関係を模索することなく、罪のない彼氏に痛みを押し付けたようにも見えた。自己評価が低く悩んだ主人公であればこそ、同じく悩みをもつ読者に響く選択とは何か熟考してほしい。作画はセンシティブな演出や表情にマッチしていたが、荒さも各所で目立ったので、さらに安定感を高めて欲しい。

「運命の従者」

「運命の従者」

藤平衛(25)

あらすじ

このムラでは、人の運命は神が決める。誰もがそのしきたりに従い生きる中、少年・タオヤはしきたりに逆らい、罰として誰もが忌避する「闇の運命」に生まれた少女・サイカが囚われる牢の番人になる。変わり者のタオヤはサイカと次第に打ち解けていくが、ある日サイカが洪水の生贄にされることになり…。

作品講評

構成が読者を引き込むものになっており、大変良かったです。特に後半はキャラクターの行動、セリフ、そしてその演出がしっかり魅力的でした。一方で前半が世界観やキャラの紹介に終始してしまっているので、読者離れを防ぐため、読者の心を掴むシーンが早い段階で欲しいところです。画力はまだ足りないものの、キャラクターが持っている感情が表情にきちんと乗っかっており、画面の構図からは意図が感じられました。言葉に意味があり、それを伝えられる絵を作れているので、後はその持ち味を活かしたまま真っ直ぐレベルアップしてもらえればと思います。

「あの世空港でお茶を」

「あの世空港でお茶を」

三機

あらすじ

亡くなった者達を天界に送り届ける空港で、現世に強い未練をもち空港を飛び出してしまったショウ。そんな彼の元に、パイロットの制服に身を包む人物が現れ、“不思議なお茶”を差し出してくるのだが――…。

作品講評

独特な絵柄や、あの世と空港を組み合わせたアイデアが魅力的であった。また、人間ドラマがしっかりと描かれており今回の受賞に繋がった。しかし、キャラクター描写はデッサンがまだ固く、背景は描き込み不足といった所が目についた。また、物語では空港というアイデアを生かし切れていないのが勿体なかった。例えば登場手続きや、出国審査など“空港”を連想させるネタを盛り込めるとなお良かった。今後の成長と活躍に大いに期待している。

最終選考作品

「あなたは運命の人!」(完成原稿部門)

坂本成

「erase」(完成原稿部門)

さん.(34)

「四ツ谷くんの見ている世界は変」(完成原稿部門)

紅リアン(29)

「祭りの夜、君と」(完成原稿部門)

フジノ(19)

総評

佳作1作品・奨励賞以下7作品選出。
ポテンシャルを秘めた、伸びしろが楽しみな作品が多かった今回。

注目は、前作から飛躍的にクオリティが上昇した、池田ルイ氏の「この愛の行方」。ストーリー、構成、作画、全ての面でレベルアップしており、今回の佳作受賞と相成った。元々愛憎劇を得意とする池田氏ではあったが、本作はより普遍的なテーマを著者ならではの切り口で「人間」を描いた事を評価した。作画に関してはおいおい修正していくとして、次はさらに企画性を押し出した作品を期待したい。

奨励賞の「メメント・モリ」も前作より展開や画面構成に気を配り、読者を楽しませようという意識が見られたが、技術的な面で惜しくも及ばなかった。前作、今作と一歩先へという意気込みが見られる意欲作ではあるが、闇雲に挑戦するのではなく、一度初心に立ち返り自身の目指すべき努力の方向性を明確化してみよう。
同じく奨励賞の「らんちゅうエントロピー」。可愛らしいタッチや爽やかな読後感など読者の印象に残る点もありつつ、しっかりとまとまりもある作品。しかし、作画面でのムラや起承転結のメリハリの甘さが評価に響いた。作品をもう一歩良くしようという粘りを次回作では見せて欲しい。

今後も自身の作家性を遺憾なく発揮した作品の投稿をお待ちしております。

10月末〆切の発表は2018年11月30日!